日本野鳥の会に入っているわけでもなく(特に今日は入ろうかと思ったりする気まぐれもないわけではないが)、特にバードウォッチングを趣味としているわけでもない私が、ブログのタイトルになぜ「ヤマガラ」を入れたのか、野鳥観察日記を書くというつもりでもないのに、なぜか?
それについても書かなければいけないだろうし、その気もあって始めたブログなのだが、山雀(ヤマガラ)や四十雀(シジュウカラ)について書く前に他の鳥について書くことになってしまったらしい。
11月の初め頃だったか、二階の小窓から家の北東側の崖を見上げると、ちょっと前に市が伐採してくれた崖上の雑木林の直径15センチほどの木の切られた幹に、腹が赤い、いや、オレンジ色の鳥がとまっているのが見えたのだ。
遠目で細かい形がわからず、庭によくやってくるヤマガラなのかと最初は思ったのだが、それにしては少し大きい。
しばらく眺めていたのだが、あちらもまたそこでしばし周囲を睥睨するかの如し。
十数分して、つっと飛び立って林の中に消えた。
数日前だったか、やはり同じ窓から庭を眺めていると、枯葉をガサゴソと鳴らす音がする。
風ではない。
どう対処していいものか悩まされることの多いタイワンリスでもない。
枯葉を引っ掻き回す音が違う。
荒れた庭を見回してみたのだが、生き物らしい動きが見えず、「何だろう」と思うだけでそれきり自分の部屋に戻ろうとしたときだ。
視野の端で黒っぽいものが動いたような気がした。
そしてあのガサゴソが同時に聞こえたのだ。
ならば、それがあれだ!
見直すと、荒れた庭に物置同然にしている古い小さな家があるのだが、その土台付近の枯葉をつついている鳥が居る。
日陰の中で、しかも、斜め後ろ姿と、首から上が枯葉に隠れている横向きの姿しか見えないので鳥の種類はわからなかった。
もともと鳥に詳しいわけでもないので、しっかり見えたとしてもわからないだろうと思ったが、ヒヨドリやムクドリよりは小さそうだが、あの喧しいスズメよりは大きい。
同じように昆虫の幼虫や環形動物を漁る蛾眉鳥でもない。
望遠レンズを付けたままのカメラを構えて見てみるが、日陰に居て色や姿は明瞭に見ることができない。
やがて枯葉漁りをやめて西に向かって歩き出したので、とりあえずシャッターを切り何枚か撮るが、それでも姿形を私はうまく認識できなかった。
「ダメだな」と思う。
やがて望遠の狭い視野から消え、カメラから目を離したときには鳥の姿はなかった。
磁気カードを取り出してコンピュータのモニタで眺め直す気力もわかなかったので、そのまま忘れてしまっていた。
そして今朝。
先日と同じ位置に同じ鳥、そして、同じ音。
再び、カメラを構えて十数枚シャッターを切りはしたが、なんとか姿が写せたのは2,3枚だった。
ともかくも今日は拡大した画面で眺めてみる。
「見たことのない鳥だ」(と思うが、そもそも私が見たことのある鳥の種類は極めて限られているから、この思考は余り意味がない。)
で、数少ない鳥の本である野鳥図鑑のページを全部めくってみる。
似ていると思う種があった。
しかし、それは島嶼部にしか生息していない鳥らしい。
本に掲載されている写真からだと、専門家でもない者の目には異種ですら同種に見える、などということはよくありそうなことだと思う。
しかし、やはりどう見ても、私の目にはそのページの鳥にしか見えない。動画でも見れば動きや向きなどから得られる情報があるかと、ようつべる。
オレンジ色は腹というよりは胸。腹は白く、ちょっとカラフルな燕尾服のようにも見える。
嘴の付け根から先端方向に向かって、黒い小さな三角形。
黄色い目の周囲。
アカコッコ(3)20年前の三宅島(東京都) - Izu thrush - Wild Bird - 野鳥 動画図鑑
やはり、庭の鳥はこの鳥に違いないと素人確信する。
その鳥、アカコッコ、スズメ目ツグミ科、Turdus celaenops、英名、Izu Thrush、伊豆諸島、トカラ列島、などに生息するも、三宅島噴火や害獣であるネズミ対策に放ったイタチのせいで激減し、絶滅危惧IB類(EN)の鳥だと書かれている。
かの屋久島にも居たが今はほぼ絶滅とある。
そしてそれ故にか、国の天然記念物。
なんと言うことだ。
弊屋の荒れた庭に天然記念物?
それこそ「想定外」というところだった。アカコッコは冬季には伊豆半島にも飛来することがあるとは書いてあるが、そこから神奈川県の三浦半島の付け根まで飛んできたのだろうか。
いろいろと疑問が噴き出して来はしたが、鳥に関してはさしたる知識もない身であれば、その疑問もブツブツと泡のごとくに我が内側へと消えていく。
そう、こういうときこそ、ブログにでも書いておくか、というわけで、今こうしている。
ついでに、三宅島ではアカコッコ保護に積極的な方々があって、アカコッコ館なる施設も在るらしかったので、思いつきで申し訳ないと思いつつ、写真を添えて、そこにメールしておく。
まあ、「全然違うさ」と言われるか、だから返事もこないか、どちらかかもしれないが、そういう危うい、あるいはあやふやな確率に引っかかるのが私でもあって。
(ご覧になって答えをご存知の方は是非お教えくださいますように!)
さて、どうなることか。仮に、天然記念物だったらどうすればいい?
(2015.12.26) ** 投稿日付が表示されるのに敢えて日付を書くのは、書いた日がアップする日とは必ずしも同じではない私ゆえ。
と書いた翌朝、三宅島アカコッコ館の日本野鳥の会の方から丁寧な返事が届く。
大変ありがたいことである。
(お名前は個人情報でもあるので省略させていただき、本文から少しく引用させていただくと)
「頭部の前面が淡い色であること、また、頭部と胸部の境界も不明瞭であること等から、アカハラという鳥の亜種のオオアカハラ」であろうとのこと。
で、さっそくネットで確認すると、確かにそのとおり。
いくつかの(あくまでも私が覗かせていただいた)関連ページは、
野鳥観察フィールドノート - オオアカハラ・アカハラ比較 Brown-headed thrush
と
と
である。
実は近所にも結構いるらしいアカハラを最初考えたのだが、色合いもかなり違うので、その時点でアカハラを除外した私だが、「亜種」ということに考えが及ばなかった。
これでスッキリした!が、以下はそこからまた沸き上がってきた疑問があって(もちろん、これは、正解やご説明に不満があってのことでは全くなくて、細かいことが気になってしまうという私の悪い癖で)、それは、「亜種」の「亜」という字に象徴されるような問題なのだ。
頭部の色が確かにアカコッコより薄いのは気づいていたが、雌は黒くならないようなので、若い雄はこの程度かなと私は考えてしまっていた(これは素人っぽい不用心さだ)。
鮮やかなオレンジ、茶褐色、暗い茶褐色、黒、というふうにグラデーションするとして、「頭部の前面が淡い色であること」と「頭部と胸部の境界も不明瞭であること」は完全に別の特徴点、区別する条件ではないだろう、等々。
この2つの似て非なる条件について数秒考えた。
頭部の前面が濃くなって黒に近づけば頭部と胸部の境界は明瞭になるわけであり、頭部と胸部の境界が明瞭であるためには少なくとも、頭部の前面が濃いか、でなければ胸のオレンジが著しく暗茶褐色と異なって明るいか別の色であればよい、等々。
私には微妙と思える、こうした様々な特徴あるいは条件がどれだけ異なっていれば、異種あるいは別の亜種であると判断するのかが、第一の疑問。
もう一つは既に上に書いていることだが、互いにオーバーラップするところのある2つの条件がどういう関係にあるのかを明確にする一般的な分析方法は何だろうかという点だ。
後者の場合、もしかしたら、この2つの条件を規定している遺伝子が別々であるか、少なくとも同一の遺伝子が関与しているかといったことを調べるという手段も在るのかもしれない。
しかし、羽毛とかの色に関する条件の相違を考えるときに別の次元である遺伝子の異同を使うということがいいかどうかは、特に私が日頃気にしていることだったりする。
となって、遺伝子レベルに話を移行しないとしたら、どういうふうに区別を定式化できるか。
(それはおそらく、遺伝子レベルで科学できない時代の分類学者たちの大きな問題であったのではないかと憶測する。)
はてさて、要するにこういう埒もない話が続くのだろうか、このブログでは。
(2016/12/27)