鎌倉ヤマガラ日記

鳥の話はあれども野鳥観察日記ではない似て非なるもの

雑詩

2017年8月北海道旅行から

8/9 白樺が笑った 夜の露天風呂の暗がりの向こう 昼間半袖では寒いほどだった空気が 裸なのに今は爽快だ 白樺の向こうに谷間の流れを見て 立ちつくす 忘れがたきその時のこと この柔らかな硫黄の匂いの なめらかにきらめく湯のなかの今を 私はいつまで覚…

蜂たちの羽音

親指の爪ほどもない黒っぽい小さな生き物は詰め草の濃い緑に隠れてすぐには見つけられないが沸き上がるような五月の風に混じって近づいてくる柔らかな低音の羽音ははっきりとそして耳をくすぐるように幾つも聞こえている蜂たちが春が育てた初夏を集めにやっ…

こんな時がある

誰でもこんな時がある ちょっと怒って でも真顔になりきれず 人生ってそんなものなのかもと考える でもそれは ほんのひとときだけ そう そんなものなんだよ それは きっとね (2017/05014)

桜のワイン

さくらのわいん 忘れていたローズアメシスト 流れた時のように 澄んで透明になり きっといつか あなたの唇が濡れて微笑むのを見ることがある 満ちた時 過ぎていく酔い 花のようにはらはらと散る たったひと雫の恋を 浮かべたまま いつまでも眺めていた こん…

カップの中の麦

エンドウの蔓に巻きかれた麦穂が強めの春風のせいか折れていた 大切に部屋に持ち帰って白いカップに入れてみる 若い麦の色は何だろう 空の青、それとも、草の緑か 外は快晴 風はもう五月 青き麦 空の置き忘れたる子の如し (2017/04/29)

ゲンゲが咲いたシロツメクサが咲いた

ゲンゲが咲いた シロツメクサが咲いた ただそれだけのこと ただそれだけのことなのだが でもただそれだけのことではない シロツメクサは野を模した庭一面に広げられた絨毯 ひと冬を越したものでないと咲かないと聞いていたから 冬が過ぎ春が来るのを そして…

道を歩く

誰も知らない道を歩いて行った そうして辿り着いたのが自分の家だった そんな不思議な そしてある意味無意味な堂々巡りの生を垂直に飛び抜けて その青空で出会った鳥のような君を愛することにして 今がある のだろうか 僕は歩くのが好きだ きっといつまでも …

夢を夢見よ

夢を夢見よ 朝ぼらけに目覚めた後もなお 夢を夢見よ その身をもって 生終わる日まで いなや生終わりても たやすきことかな すべては夢 ふと夢見ただけの夢なれば (2017/03/21)

黙音(1)

=========== その音を聞いた時 その音 その音を聞いた時 私は達した 頂点に 知ることの この世界を知ることの 未踏の高み 忘れがたき 生の音 死の切っ先で弾けていった音 =========== 不協和音 果てしない不協和音の海で 泳いでいた …