鎌倉ヤマガラ日記

鳥の話はあれども野鳥観察日記ではない似て非なるもの

複合的リンクに巻き込まれる: YouTube Analytics データから考えたこと

前記事のビデオ・クリップは、多くの人に再生されることを予定してはいなかった。

 

 

というか、私の場合はYouTubeへの投稿はどこかのブログの素材として使うためであり、YouTube単独で多くの人に見てもらうという意識はあまり無いので、由比ヶ浜の夜光虫についてのページのアクセス数(一日で1500アクセスあったろうか)にはいささか驚いた。

『青く光る』のビデオは夜光虫の青い波頭を見て感動した勢いでUPしたものだったが、2つ目の『押し寄せる』は、比較してみたいと思って慌てて作った長めのバージョンで、1つ目から半日ほど(正確には9時間)後にUPした。

以下はYouTube AnalyticsのRealtime表示を2つのビデオ分上下につないだものだ。1つ目は35秒ほどの短いもので、2つ目は5分15秒ほどだ(青字で示してある)。

 

f:id:daymonthtraveler:20170507132658p:plain

 

グラフはいずれもRealtime表示なので時間とともに棒グラフが左に移動していく(Google Analyticsでお馴染みのもの)。

左側のグラフの時間軸は1本の棒が1時間、右側のグラフでは1分となっているらしい。

これらのグラフは、アクセスのピークが過ぎた5月7日の昼頃のもので、左グラフには、草色の四角でネットの人たちのおおよその活動時間を(私の勝手で大雑把な推測で)示し、その中の薄いターコイズブルーの四角は2つ目のビデオのアクセスがある程度以上だった時間帯を示している。

2つ目のビデオは半日後にUPされたものであるが、比較的すぐにアクセスが増え始めていること、それからターコイズブルーの四角の右辺近くでは2つのビデオともアクセスがやや急速に減少していることがわかる(1つ目のビデオに対するアクセスも比較的すぐだった)。

後者の変化はおそらく基本的には時間が深夜になったために起きたのであると思われるが、ただそれだけであるなら、7日の午前辺りからアクセスが少しは増えてもよさそうだが、そうなっていない。

右側のグラフに見るようにアクセスはちょぼちょぼ続いている程度だ。

 

もともと大した内容のビデオではないので、アクセス者全部が最後まで見終わってくれたとも思えない(35秒の最後まで見た人はおそらくは50%程度だろうし、長い方のビデオについてはまだWatch timeのデータが出ていない)のだが、残念な内容はひとまずおいて、7日午前中にアクセスがほとんど増加しない理由は他にもいくつも考えられるだろう。

1)新しいビデオが注目されるのも最初の一日だけさ!というようなinitial effect(初期/初頭効果)で、一般的なことだった。

2) 特に繰り返し見る内容ではないので1回見たら2度と見ないので、それで終わり。

しかし、一番私がそうなのか!と思ったことは、いずれのビデオもUPしてほとんどすぐにアクセスが増え始めたということで、これは明らかに「夜光虫」に関するビデオをYouTube内検索で探していた人がかなりいたか、外の検索システムで「夜光虫」などのキーワードで検索した人が多かったかのどちらかだったのではないかと思っていた。

そして実際には、

1) Suggested Videos (YouTubeお薦め) 47%

2) External (外部検索などの外部リンクからのアクセス) 38%

3) YouTube Search (YouTube内検索) 7%

だった( () 内の説明は私の推測で正確ではない)。

 

鎌倉周辺の海での赤潮発生については既に新聞やその他のニュースメディアでも報道がなされており、その赤潮原因のプランクトンの中に夜光虫が含まれる可能性が大きいことは推測できたので、5日夜に夜光虫が観察できるかもしれないという予測は広がっていただろう。

そして、「期待」の中で夜になり夜光虫が光り始めたことが報道されたり、あるいは素早いYouTuberによってビデオがUPされたりしていたので、5日深夜6日未明に私がビデオをUPした頃には、もう十分な下地が出来上がっていたのに違いない。

 

要するに、今回まあまあのアクセス数を稼いだのは、この4〜6日に限らず夜光虫に関心を持っていてキーワードで検索し探し当てた人が多かったためではないということなのであり、いわば、タイミングが良かった、あるいは、報道加算要因によるアクセス数だったと言うべきなのだ。

もう1つの要因は、浜辺あるいはその近くにいた人たちによる、いわばリアルタイムのアクセスがあったという可能性だ。

1) Mobile phoneおよびTabletからのアクセスが45+12=57%で、

2) Computerからのアクセス42%を上回っていた。

もちろん、今やネットユーザの相当数がモバイルデバイスからのものなのだろうということは考えなければならないが、そうだとしても、その中には夜光虫現場およびその周辺に「臨場」していた人たちもかなりいたと推測できる(実際にスマホを持っている人たちが多かったことは、浜辺をやや遠くから写した写真の中の点(小さい面?)光源の多さからもわかるというものだ)。

そういう人たちは「他の人はこのイベントをどう撮影しているだろう?」とか「どんな光景が観察されたのだろう?」という疑問からYouTubeやその他のネットにアクセスしていた可能性もあるし、そういう声を何度も聞いた。

要するにこれは、「連休中の5月5日、観光地である鎌倉の海水浴場でもある海岸で起きた夜光虫増殖とそれによる発光ショウ」というリアルタイム・イベントと同時進行の集団行動的なアクセスだったのだ。

つまり、新聞、テレビ、ネットにおけるニュース報道、口コミなどによって引き起こされた一時的な関心を背景にしているアクセスだ。

こうした背景は、検索結果やコンテンツの中に明示的にあるリンクではなく、さまざまな社会状況を含みこんだ間接的なリンク、複合的なリンクになっており、そして、それは無形で、しかも、時間依存的なものだろう。

 

そんなこんなで、我に返って考えた。

言わば「時宜に適った」あるいはタイムリーなビデオはほっておいてもアクセスを獲得する可能性が高く、そういう「文脈」(あるいはネット状況)なしにUPされたビデオは内容が素晴らしくても、おそらくすぐにはアクセスを獲得しない。

逆に、こうしたタイムリーな投稿は、タイムリーさが生命みたいなものであって集団的な動向があってこそ多くアクセスされるものであり、そういう状況がなくなれば、それ以上のアクセスはなくなる可能性が高く、従って、状況から独立してなお「高い内容」を持っているものとは限らないことになる。

こうしたことは、ネットで活動する人たちにはごく当たり前の理屈なのだろうと思うのだが、私の場合、今回そのことを改めて考えさせられたのである。

多くのアクセスがあれば、ビデオにせよその他のメディアにせよ、投じた人は喜ぶだろうが、それはよいとしても、それ(より多くのアクセス)を求めて投稿するようになれば、時間変動する集団心理・社会変動的な動き・関心に結果として必然的に巻き込まれていくことにもなるだろう。

そういう複合的なリンクに巻き込まれていくこと、それが良いことか悪いことか今のところ私は判断しない。

言わば「時流に乗る」ことの是非はなかなかに難しいと思うからである。

 

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(2017/05/07)